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存続期間延長制度に関する改正施行令を2020年7月14日付で施行

2020.08.10

韓国特許庁は、登録遅延による存続期間延長(特許法第92条の2)および許可等による存続期間延長(特許法第89条)に関する制度を改善する施行令を2020年7月14日付で施行した。本施行令に含まれる主な変更事項は、ⅰ)出願人が十分な努力をしたにもかかわらず審査が遅延した期間分、特許権・実用新案権の存続期間を延長することができるよう調整が図られたこと、および、ⅱ)麻薬類医薬品の品目許可に期間を要した場合でも特許権存続期間を延長可能としたことであった。


・特許権・実用新案権の存続期間延長の期間算定を調整へ

現在、韓国では、特許庁の審査遅延により特許権の存続期間が短縮されるようになった期間を補償するために、特許権または実用新案権の設定登録が基準日(特許出願日から4年または、審査請求日から3年のうち遅い日)よりも遅延した場合にその超過した期間分、特許権・実用新案権の存続期間を延長することができるよう、登録遅延による存続期間延長制度を設けている。ただし、審査過程で出願人により遅延した期間がある場合には、その期間は存続期間の延長期間から除外されるものとされている。こうした制度は2012年の韓・米FTAによって導入されたものであって、それぞれの国の特許制度に合わせて出願人による遅延期間の類型を国内法で規定したものといえる。 

今回の改正施行令は、出願人が審査に必要な書類を提出しなかったために審査が遅延した期間など、出願人により遅延した一部の期間を特許権存続期間の延長期間から除外する旨を明示し、出願人が十分な努力をしたにもかかわらず審査が遅延した期間分、特許権・実用新案権の存続期間を延長することができるように調整するものとなった。 
まず従来の施行令では、出願人により遅延した期間(一般的に下図中のオレンジ色で表示された期間)は審査が遅延した期間から除外されていた。

 

 
これに対し、改正施行令では、図中で青色に表示されたBとCの期間も審査が遅延した期間から除外されることとなる。具体的に、改正前は特許拒絶決定から再審査請求時までの期間(A期間)を出願人により遅延した期間と規定していたところ、改正施行令では、特許拒絶決定から再審査を通じた特許可否の決定日(A+B期間)までが出願人により遅延した期間とされるようになった(再審査請求日が2020.7.14.またはそれ以後である特許権に対し登録遅延による存続期間延長出願をする場合に限り適用される)。さらに期間Cについては、出願人が審査に必要な書類(たとえば、外国語出願に関する誤訳訂正書、微生物寄託事実証明書類、新規性喪失の例外適用証明書類、優先権主張証明書類)を審査請求日から8ヶ月以降に提出した場合、その8ヶ月になる日の翌日から当該書類が提出された日までの期間も出願人により遅延した期間として算入されることとなった。


・麻薬類医薬品の品目許可に必要とされた期間を特許権存続期間延長の対象として認定

今回の改正施行令では、2019年に判示された特許法院の判決を反映する形で、「麻薬類管理に関する法律」により食品医薬品安全処(韓国の行政機関の1つで、以下「食薬処」とする。)からの品目許可を受けるのに要した期間も、許可等による存続期間延長の対象になることが明確にされた。

韓国で特許が登録された場合には、その特許権の存続期間は原則的に特許出願日から20年までであるが、医薬品や農薬を製造・販売するためには食薬処または農村振興庁で別途の品目許可・登録手続きをしなければならないため、その関連特許を受けたとしても当局による許可・登録を待つ間はその特許技術を使用することができず、これにより特許を実施できる期間が短くなる。このため、5年を限度として品目許可や登録に要した期間分、特許権の存続期間を延長する制度が運用されているが、これまでその対象は「薬事法」により食薬処から品目許可を受けた医薬品と、「農薬管理法」により農村振興庁に登録した農薬・原剤のみと規定されていた。

一方、麻薬性鎮痛剤等の医薬品については製造・販売時に「麻薬類管理に関する法律」により食薬処から品目許可を受けるものとされているが、従来の施行令ではこれを特許権存続期間延長の対象として明示していなかったことから、特許庁および特許審判院は「麻薬類管理に関する法律」による品目許可に要した期間について存続期間延長登録出願をしても許容していなかった。これに関連して弊所で2019年に代理した事件において、麻薬等に関する発明が存続期間延長の対象として規定されていないのは立法上の不備である旨の判決を得たものが上述した特許法院の判決であり、今回の改正施行令は同判決の内容を反映したものと解される。

今回の改正施行令は、麻薬類医薬品の品目許可のために期間を要した場合にも特許権存続期間の延長が可能であることを明示し、特許権者の権利保護を強化する方向で改善されたものといえる。改正規定は、2020年7月14日以後に特許権存続期間の延長登録出願をした案件から適用される。
 

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