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韓国実用新案法の大幅な改正を推進中

2021.05.06

2019年を基準とし、中国の年間実用新案出願は特許出願(約140万件)よりも多い226万件を記録した。※1 しかし、これに比べて2019年韓国の実用新案出願件数は約5,400件で、特許出願件数の2.5%に過ぎず、実用新案制度の利用が低調である。※2 

 

 

実用新案登録制度は技術水準が低く特許としては保護されにくいが実用的価値を有する考案を保護・奨励するために採択された制度で、現行の実用新案法では産業上利用可能な「考案」で、その出願前に国内・外で公知・公用となった考案や、通常の技術者が先行考案によって極めて容易に考案できる考案でなければ実用新案登録を受けることができるようにしている(第4条第1項および第2項)。

しかし、実用新案は特許と比較して①保護対象が制限的で、②登録要件(進歩性判断)の差はあまりない反面、③保護期間は短いため、同制度利用による実益が少なく、実用新案の出願件数は毎年明らかに減少している傾向が見られる。

 

 

そこで、韓国特許庁は2020年9月に中小企業やベンチャー企業などが事業化の初期段階に容易に排他的権利を確保することができるように登録要件の緩和を主な骨子とする「実用新案法一部改正法律案」を発議した。改正案の主な内容は次の通り。

 

2021年1月には国会議員立法として、実用新案制度の利用を促進させるために特許との差別化を明示し、商業的価値がない出願が乱発するのを抑制する一方、実際に事業化の意志がある出願人の権利確保を支援するために事業化要件を新設する改正案を発議した。※3

 

事業化若しくは実施(予定を含む)要件の導入が現実のものとなる場合には、現行特許、実用新案の優先審査要件のうち、「出願人が出願された発明(考案)を業として実施または、実施準備中である出願」に関する証拠書類※4が参考になると思われる。


なお、上記2つの改正案のうち進歩性要件の緩和については、登録のハードルが過度に低くなると保護する価値がない権利が量産され、消耗戦が乱発する可能性があると業界では危惧している。また、事業化または、実施(予定)要件の新設については、①現行の実用新案権の存続期間において、出願後10年以内に状況に応じて事業化(実施)の可否を決定できるにも関わらず、出願時または、審査請求時に事業化、若しくは実施(予定)を前提に登録を制限しているので、現行の実用新案法の趣旨と反し、出願人の事業的選択の幅を制限するおそれがあるとの批判もある。その他にも、②事業化能力が乏しい考案者にはかえって不利に作用する可能性があり、③実用的な考案を保護、奨励するという「実用新案法」の目的にそぐわないという批判がある。 

従って、今後、法案の審査過程で修正が加えられる可能性も少なくないため、国会での法案通過過程を見守る必要がある。

 



※1. 出処: KOTRA海外市場ニュース, 「2019年の中国の知識財産権の現況」
※2. 日本の2019年実用新案出願件数は約5,200件で、特許出願数の1.7%に過ぎない(参考: 日本特許庁, 「特許出願等統計速報」)
※3. 当該改正案については、2021年3月8日付で「産業通商資源中小ベンチャー企業委員会」で検討報告書が議決され、今後、法制司法委員会および国会本会での検討が行われる予定。
※4. 実施(予定)と関連しては実施品写真、試作品写真、見本、カタログ、使用説明書などが要求され、事業化と関連した「業」の証明としては取引明細表、納品確認書、供給契約書、投資実績書、事業者登録証などが要求される。

キーワード

#韓国 #実用新案法

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