韓国では5月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任し、新政権のもと、李仁実(イ・インシル)韓国女性発明協会会長(1961年生まれ)が第28代特許庁長に任命された。1949年に特許局(現特許庁)が発足して以来、初の女性特許庁長が誕生した。また、弁理士になってから約10年間弊所で勤務していたことがあり、弁理士として合計して37年という経験が豊富な民間の知財専門家が特許庁長に就任したことも初めてで多くの注目を浴びている。
李仁実 特許庁長は、就任の挨拶で「不要な仕事は減らし、本質に集中しましょう」と強調し、在任期間中、次の項目を特許庁の最優先課題とした。
1. 審査官、審判官は本来の審査、審判業務に集中すべき
特許庁の「審査」と「審判」の役割が最も基本であるため、正確な審査、審判になるよう専門性の強化を図ると明らかにした。これは、これまで特許庁の各種施策などと関連して審査官が報告書の作成などに多くの時間が割かれたことを意識したものと見られる。
2. 先端技術分野における退職者のノウハウを活用した専門審査官数の拡大
半導体分野をはじめに先端技術分野の退職者が持つノウハウを活用して、来年から5年間、少なくとも毎年200人の専門審査官を採用するために関係部署と協議中であると明らかにした。これにより、半導体など関連技術審査の専門性を確保し、足りない審査人材を補強することで、特許審査のスピードアップを図る趣旨である。さらには先端技術分野の人材が退職後海外へ流出してしまうことも防ぐことができるものと見ている。
3. 世界各地へ特許官を派遣
海外に進出している韓国企業が現地で特許や商標紛争に遭う場合、専門的なイシューであるため、現地の大使館では対応がなかなか難しい。にもかかわらず、現在、特許庁から海外に特許官が派遣されている国はアメリカと日本、ヨーロッパ、中国など一部に過ぎない。韓国企業の経済活動が活発なベトナム、インドネシアなどASEANと、ブラジル、チリなど中南米にも特許官を派遣することで、韓国企業の知的財産に関する緊密な支援ができるよう推進する計画であると明らかにした。
これ以外にも、技術を保有する企業が特許侵害訴訟に遭った時に、より厚く保護されるように弁護士-弁理士の共同代理制度に関しても、主な課題として推進すると明らかにした。
なお、韓国の特許庁長は「次官級」政務職公務員の地位を有しており、公式的な任期は2年である。




