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均等論判断において、出願人の意図、補正理由を参酌して意識的除外に該当すると判断した事例

2022.11.21

出願審査過程で拒絶理由を克服するため、本件特許発明(以下、「対象特許」とする。)の出願時に請求範囲に記載されていた事項を意図的に削除したことは対象特許の権利範囲から意識的に除外したことに該当するので、確認対象発明は対象特許の均等範囲に属さないと判断した。(特許法院2021.11.25.言渡し2021ホ3185判決)

 

事実関係

 

被告(審判請求人)は、原告(被請求人、特許権者)に対して、特許審判院に確認対象発明が対象特許(発明の名称:バイパス運転が可能な熱回収換気装置)の権利範囲に属さない旨の確認を求める消極的権利範囲確認審判を請求した。これに対し特許審判院は、確認対象発明は対象特許発明の一部構成要素を欠如しているため対象特許の権利範囲に属さないという審決をした。

本件の争点となった構成は、対象特許請求項1発明における「バイパス運転時には互いに交代で作動する給気送風機と排気送風機」で、被告が特定する確認対象発明は「バイパス運転時には給気送風機は作動し、排気送風機は停止状態を維持」するものであった。これについて原告は、給気送風機と排気送風機が互いに交代で作動する場合にもう一つは停止せざるを得ないので確認対象発明の上記構成も対象特許の文言的権利範囲に属するだけでなく、文言的に異なるとしても均等範囲に属すると主張し、特許法院に該当審決に対する取消しを請求した。

 

特許法院の判断

 

■確認対象発明が対象特許の均等範囲に属するかどうか

 

(1)関連法理
特許発明の出願過程で、ある構成が請求範囲から意識的に除外されたかは、明細書だけでなく出願から特許になるまでに特許庁の審査官が提示した見解と、出願人が出願過程で提出した補正書および意見書等に示された出願人の意図、補正理由等を参酌して判断すべきである。したがって出願過程で請求範囲の縮小が成立したという事情のみにより縮小前の構成と縮小後の構成を比較して、その間に存在する全ての構成が請求範囲から意識的に除外されたと断定するのではなく、出願過程に示された様々な事情を総合してみるとき、出願人がある構成を権利範囲から除外しようとする意志が存在すると見ることができる場合にこれを認めることができるものである。また、このような法理は請求範囲の減縮なしに意見書提出等を通じた意見陳述があった時にも同じように適用される。(大法院2017.4.26.言渡し2014フ638判決等参照)

(2)判断
本件特許発明の明細書記載および出願審査経過に照らしてみると、本件特許発明の出願人である原告は、出願当時、請求項1に記載された「バイパス流路を生成するバイパスダンパ」は特許庁審査官が進歩性の否定に関する拒絶理由で提示した引用発明1や2から簡単に導き出すことができるものと判断し、その拒絶理由を回避するために「バイパス運転時に選択的にいずれか一つのみ作動する給気送風機と排気送風機」という構成が付加された出願当時の請求項5を削除して出願当時の請求項2に付加された「給気送風機と排気送風機の交代作動構成」を請求項1に併合し、意見書では出願当時の請求項2に付加された「給気送風機と排気送風機の交代作動構成」が本件特許発明の核心的な技術的特徴であることを強調し、このような主張が特許庁審査官から認定され本件特許発明に対し特許を受けたものと認められる。

したがって本件特許発明の出願人である原告が特許庁審査官の意見提出通知による補正を通じて、「バイパス運転時に選択的にいずれか一つのみ作動する給気送風機と排気送風機」という構成が付加された出願当時の請求項5をそのまま削除したことは、これを本件特許発明の権利範囲から意識的に除外したとみるのが妥当である。

以上で見た通り、本件第1項発明の構成要素3(「バイパス運転時に給気送風機と排気送風機が互いに交代で作動する」構成)に対応する確認対象発明の対応構成(「バイパス運転時に給気送風機のみ作動して排気送風機は停止」という構成)は、構成要素3と文言的に同一でないだけでなく、それと均等関係にあるとみることもできない。

 

コメント

 

韓国では、一般民事法院の管轄に属する侵害訴訟とは別に、審判制度として、特許発明と確認対象発明の間における権利範囲の属否を判断する「権利範囲確認審判制度」がある。権利範囲確認審判は日本の判定制度と手続き的に多少差があるものの、法院に対する拘束力はなく、技術専門家である特許審判院の審判官に対して権利範囲の属否に対する判断を迅速に請求するという点では類似の手続きである。特に、本件判決の基礎となった「消極的権利範囲確認審判」は、第三者が特許権者を相手に確認対象発明が特許発明の権利範囲に属さないという請求の趣旨により審決を請求するものである。

本件で法院は、対象特許請求項1発明の構成のうち「バイパス運転時には互いに交代で作動する給気送風機と排気送風機」に関連し、この権利範囲に確認対象発明の「バイパス運転時には給気送風機は作動し、排気送風機は停止状態を維持」する構成が属するか否かについて、文言範囲と均等範囲に分けて各々判断した。

その均等範囲を判断するのにおいては、対象特許の審査過程で①出願時には独立項に対して請求項2(熱交換運転時には共に作動するが、バイパス運転時には互いに交代で作動する給気送風機(30)と排気送風機(40))と、請求項5(熱交換運転時には共に作動するが、バイパス運転時には選択的にいずれか一つのみ作動する給気送風機(30)と排気送風機(40))が並列的な従属項であった点、②審査過程で拒絶理由を克服するために出願人が請求項2の構成を独立項に付加して請求項5は削除した点、③意見書上で請求項2の構成が出願発明の主な技術的特徴だと主張した点等に基づいて、削除された請求項5の構成は請求範囲から意識的に除外したものと判断し、削除された請求項5の構成を実現した構成に該当する確認対象発明は対象特許の均等範囲に属さないと判断した。

本件から分かるように、出願時に独立項に対して並列的な技術的特徴を含む従属項に対し審査過程でそのうちの一つの従属項を選択して独立項に付加する補正をし、残りの他の従属項を削除する補正をした場合、削除された従属項に記載された部分は請求範囲から意識的に除外されたと判断され得る。このように権利範囲の属否判断における均等論の判断時に意識的除外の適用の有無が問題になる場合には、出願人が意見書を通じて主張した内容とその意図や、拒絶理由の克服過程で行った請求項補正等に対して綿密な検討が要される。

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