Skip Navigation
Menu
ニュースレター

権利侵害時の権利者保護を強化する不正競争防止法及び特許法の改正

2024.05.24

2024年1月25日、特許権と営業秘密等の技術侵害行為に対する処罰を強化するとともに、より強力な増額賠償制度を導入する「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(以下、「不正競争防止法」)と「特許法」の法改正が国会本会議で可決された。本改正法は2024年8月21日から施行される予定。

今回の改正は、従来、技術侵害行為への刑事処罰や損害賠償額の水準が低く、被害者が訴えの提起等の法的措置を進めても意味ある結果を得ることができないケースが多いとの指摘を考慮したもので、主な改正内容は次のとおり。

 

1. 故意的侵害行為に対する増額損害賠償の強化

 

今回の不正競争防止法及び特許法の改正により、アイディアの奪取及び営業秘密侵害行為、又は特許権及び専用実施権侵害行為が故意的であると認められる場合、実損害の3倍まで増額損害賠償(懲罰的賠償ともいう)を課すことができるものとされていた限度が実損害の5倍まで増額損害賠償を課すことができるようになった。本改正は施行日である2024年8月21日以降に発生する違反行為から適用されるが、それ以前に始まっていた侵害行為が改正法施行日以降にも続く場合には、その施行日以降の行為に対して改正法の規定を適用することができるものと解釈される。

 

2. 営業秘密侵害の刑事処罰に関する規定の強化

 

不正競争防止法の改正により、不正競争行為犯罪や営業秘密侵害罪に対する法人の処罰を強化した。従来は法人の役職員等個人の侵害行為に対して科され得る罰金額と同じ法定刑の罰金を法人にも科すことができたが、本改正により、法人には個人に科され得る罰金刑上限の3倍まで罰金刑の言渡が可能となり、法人に対する公訴時効も現行の5年から10年に延長された。これにより、法人が介入した組織的侵害行為に対してより効果的な予防及び処罰が可能になるものと思われる。

また本改正では、営業秘密侵害行為又は不正競争行為を醸成した物品等に対しての没収規定を新設した。これにより、別途の民事訴訟手続きを経なくとも、侵害品と侵害品製造設備等に対して刑事手続での迅速で完全な没収が実施できるようになり、2次侵害等の被害拡大を防止することができる。

さらに本改正では、正当な権限なしに他人の営業秘密を毀損・滅失・変更する行為を抑止するために、不正な利益を得る又は営業秘密保有者に損害を負わせる目的で他人の営業秘密を毀損、滅失、変更した者は10年以下の懲役又は5億ウォン以下の罰金に処する条項を新設した。これにより、従来の不正競争防止法では処罰できなかったハッキング等による営業秘密の毀損、滅失、変更行為も処罰できる根拠が設けられた。

 

3. 特許庁長の是正命令制度の導入及び現行制度運用上の不備点の改善・補完

 

不正競争防止法の改正により、不正競争行為をした者に対する特許庁長の是正命令制度を導入し、是正命令を履行しなければ違反行為の内容等を公表することができるとともに、是正命令の不履行時に最大2,000万ウォンの過料を科すことができるようにした(8条1項及び20条1項1号の2新設等)。

また、特許庁の行政調査に関連する資料の閲覧・複写を当事者が要求できる根拠を新たに設けるとともに(7条の2新設)、法院からの調査記録送付要求に対して特許庁長は正当な理由なしにそれを拒否することができず、法院は、送付された調査記録に含まれる営業秘密情報を保護できるように閲覧範囲及び閲覧者制限等の手続を規定する等、現行制度の運用上示されていた不備点を改善・補完する内容が追加された(14条の7改正)。これにより、行政調査の結果を侵害差止及び損害賠償等の民事訴訟において積極的に証拠として活用することが可能になるものと予想される。

したがって今回の改正法が施行されれば、権利者は、不正競争行為者に対し民事・刑事措置を取るのに先立って、特許庁の是正命令制度やこれを通じた証拠の活用を検討することも考えられる。

共有する

cLose

関連メンバー

CLose

関連メンバー

Close