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特許法院、訂正審判の結果を待たずになされた特許無効審決に手続き的違法はないと判断

2024.08.05

特許法院は、特許無効事件の破棄差戻し審において、特許審判院が関連訂正審判の結果を待たずに特許が無効と判断した審決には手続的違法はないと判断した(特許法院2023.3.17.言渡し、2022ホ2752判決)。

 

事実関係

 

被告(無効審判請求人)は、原告(特許権者)に対し、本件特許発明は進歩性が否定されるとの理由で無効審判を請求し、特許審判院は無効審判請求を棄却する審決をした。被告はこれを不服として特許法院に審決取消訴訟を提起し、特許法院は、2021年7月2日、本件特許発明の進歩性は否定されるため本件特許は無効とされるべきであるとして審決を取り消す判決(以下、「取消判決」とする)を下した。原告はこれを不服とし大法院に上告したが、2021年11月11日に審理不続行棄却判決が言い渡され、上記取消判決はそのまま確定した(以下、「取消確定判決」とする)。

当該事件は特許審判院に差し戻され(破棄差戻し審)、特許審判院は、2022年3月18日、上記取消確定判決の趣旨により本件特許発明の進歩性が否定されるため、その特許権は無効とされるべきである旨の審決(以下、「本件審決」とする)を下した。原告はこれを不服として特許法院に審決取消訴訟を提起した。

一方、原告は、特許法院の上記取消判決が下された直後の2021年7月16日、特許審判院に本件特許発明の請求範囲を減縮する訂正審判を請求した。特許審判院は、2022年9月27日、原告が訂正しようとする発明は先行発明によりその進歩性が否定されるため特許法第136条第5項の独立特許要件を充足できないとして、原告の訂正審判請求を棄却する審決を下した。原告はこれを不服として特許法院に審決取消訴訟を提起した一方、本件審決に関する当該事件は特許法院に係属中であった。

 

両当事者の主張の要旨 

 

当該事件の審決取消訴訟において、原告は、訂正審判の審決が確定するまでは手続きを中止した上でその結果を考慮して審理判断するべきであるにもかかわらず、特許審判院が手続きを中止せずに取消確定判決に基づいて直ちに本件特許発明の進歩性を否定する本件審決を下したことは、原告の権利保護を著しく損ねたもので違法であると主張した。

一方、被告は、原告の訂正審判請求が棄却されて本件特許発明はその請求範囲が変更されておらず、また、本件審決は本件特許発明の進歩性が否定されると判断した取消確定判決の拘束力によるものであるため違法ではないと主張した。

 

特許法院の判断

 

(関連法理)法院は、審決取消の訴えが提起された場合にその請求に理由があると認めたときは、判決をもって当該審決を取り消さなければならず、審判官は、審決の取消判決が確定したときは、再び審理をして審決をしなければならず、この場合に上記取消確定判決において取消しの基本となった理由は、その事件について特許審判院を拘束する(特許法第189条)。

一方、審決を取り消す判決が確定した場合、拘束力は、取消しの理由となった審決の事実上及び法律上の判断が正当でないという点において発生するものであることから、取消し後の審理過程で新たな証拠が提出され、拘束力の判断の基礎となる証拠関係に変動が生じる等の特段の事情がない限り、特許審判院は、上記で確定した取消判決で違法と判断された理由と同一の理由によっては従来の審決と同一の結論の審決を下すことができず、ここでの新たな証拠とは、少なくとも取り消された審決がなされた審判手続又はその審決の取消訴訟において採択調査されなかったものであって審決取消判決の結論を覆すのに十分な証明力を有する証拠とみるべきである。

 

(判断の要旨)特許法院は、以下の理由により、訂正審判の結果を待たずに本件特許が無効だと判断した本件審決には手続的違法はないと判断して、原告の請求を棄却した。

 

 

コメント

 

韓国では、無効審判の審決取消訴訟段階において訂正審判を請求することが認められているところ、時期に遅れた訂正審判請求をどう扱うかについての問題が生じる。これに関して過去に大法院は、審決取消訴訟の事実審の弁論終結以降に訂正審決が確定した場合において、訂正前のクレームにより判断した当該判決は再審事由に該当しない旨の判示をしたことがある(2016フ2522全員合議体)。すなわち、上記事実審の弁論終結後に訂正審判の結果が出た場合には訂正前のクレームで特許性を判断していたとしても違法ではないとされており、逆に特許権者として訂正クレームによる特許性判断を受けるためには、特許法院における事実審の弁論終結前に訂正審決が出るように訂正審判の請求時期を前倒しすることが求められる。

この点に関連し、本件で特許権者は、特許法院において特許無効であるとして審決を取り消す「取消判決」が出た直後に訂正審判を請求したところ、その取消判決に関する破棄差戻し審において、特許審判院は当該訂正審判の結果を待たずに特許無効審決をした。その後、これに対する審決取消訴訟の判決(「本判決」)において、特許法院は、当該訂正審判の請求事実が、確定された取消判決の羈束的判断の基礎となる証拠関係に変動をもたらす「新しい証拠」とは認められないとして、破棄差戻し審の特許無効審決には手続き上の違法はないと判断した。

本件判決では、訂正審判の請求時期について直接的な言及はなされていないものの、事実審の弁論終結後に請求された訂正審判の結果を待たずに訂正前のクレームで特許性を判断したことは違法でないとしており、この点は上記の大法院判決において、事実審の弁論終結以降の訂正審決が再審事由に該当しないとしたことと軌を一にするものと考えられる。したがって、無効審判事件における実務上、特許法院の段階で訂正審判を請求する場合には、その弁論終結前に訂正審決の判決がなされるよう、その審判請求の時期には慎重を期する必要がある。

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