韓国において、産業財産情報の収集·生成、整備、管理、活用全般を網羅する内容の「産業財産情報の管理及び活用促進に関する法律」(以下「産業財産情報法」とする。)が2024年8月7日から施行されている。
産業財産情報法は、国家安保関連技術流出防止および効率的な産業財産戦略樹立などのために、全世界5.8億件の特許情報を戦略的に活用できる法的根拠を明示するもので、法律は大きく分けて、ⅰ)国家安保·技術流出防止目的の産業財産情報1 の提供、ⅱ)技術·産業支援目的の産業財産情報の分析·活用、ⅲ)特許情報インフラ構築などで構成されている。
1.国家安保·技術流出防止目的の産業財産情報の提供
出願中の特許情報を分析·活用できる法的根拠を設け、その分析結果を国家行政機関に提供等するのにおいて技術保護のための機関間の協力体系を構築できるようにする。
従来は、出願後18ヶ月を過ぎた公開特許データのみを活用できたため最新技術の分析及び他の機関への情報提供に限界があったが、今回の産業財産情報法の施行により技術安保に関連する緊急事案に対して直ちに対応できるようになる。
2.技術·産業支援目的の産業財産情報の分析·活用
研究開発(R&D)·産業支援のために特許情報をビッグデータ化し、韓国企業·研究者などの公開情報を含む特許情報を収集·整備できるようにする。
これを土台として特許情報を加工·分析して世界技術動向を適時に把握し、重複研究を防止するなど、効率的な産業財産戦略樹立が可能になる。
3.特許情報インフラ構築
特許情報体制(システム)·データベース(DB)の構築及び情報化事業の法的根拠を設ける。これにより特許情報インフラも構築して総合的かつ体系的な情報管理が可能になると同時に、情報活用度を高めることができるようになる。
なお、韓国特許庁は、産業財産情報法の施行に合わせて「産業財産情報活用基本計画」も年内に樹立する予定としており、この基本計画は、特許情報の戦略的分析·活用のための多様な情報資料(データ)発掘·整備、技術の流出防止及び保護、産業財産情報活用の支援などを包括するものとしている。これに関連し、今年6月には産業界、学界などの外部専門家で構成された「産業財産情報活用基本計画樹立推進団」を発足させ、関連部署、特許情報サービス業者、出願人·発明者などの各界各層の多様な意見を取りまとめて基本計画を作成する予定とのことである。
以上のように、今回新たに制定された産業財産情報法は、国家安全保障、技術流出、ビッグデータの活用などの観点から産業財産情報の活用を拡大しようとするものであり、具体的な政策については今後の動向を見守る必要がある。
1. 本法での「産業財産」とは、「発明振興法」第2条第4号による産業財産権の発生·変更及び消滅の過程で収集され、又は生成される知識財産のことであり、「産業財産情報」とは、産業財産の創出·保護及び活用の段階で特許庁長が収集·生成し、又はこれを調査·分析·加工·連携する等の方法により処理したあらゆる種類の知識又は資料をいう(第2条)。