2024年12月27日、「産業技術の流出防止及び保護に関する法律」(以下「産業技術保護法」)改正案が韓国の国会本会議で可決された。本改正案は、国家核心技術等の産業技術の体系的管理を強化し、産業技術侵害行為の範囲拡大及び処罰を強化する方向で準備された。また、同日、韓国の産業通商資源部は、今後3年間にわたり推進する「第5次産業技術の流出防止及び保護に関する総合計画」(以下「第5次総合計画」)も公開した。
具体的な産業技術保護法の改正及び第5次総合計画の主な内容は、以下のとおりである。今回の改正産業技術保護法は公布後6ヶ月が経過した日から施行される予定である。
1. 産業技術保護法の主な改正内容
1) 国家核心技術の体系的管理の強化
これまで国家核心技術判定の手続きとしては、技術保有機関が産業通商資源部長官に申請して判定を受ける手続きのみが規定されていたが、本改正法では産業通商資源部長官が職権により国家核心技術を保有していると見られる技術保有機関に判定申請をすべき旨を通知できる規定を新設した(法第9条の2)。
加えて、国家核心技術保有機関登録制度を導入し、技術保有機関が国家核心技術に該当する旨の判定等を受けた場合、国家核心技術関連事項の登録を産業通商部長官に申請することを義務付ける規定を新設した(法第9条の3)。
技術保有機関が、国家核心技術判定申請通知を受けても判定申請書類を提出しない場合や、上記国家核心技術関連事項の登録を申請しない場合には、1千万ウォン以下の過料に処され得る(法第39条第1項第1号、第2号)。
2) 産業技術の海外流出防止のための規制強化
従来、国家核心技術保有機関が未承認·未申告の輸出行為を行った場合には、情報捜査機関の長の調査及び委員会の審議を経て輸出中止·輸出禁止·原状回復等の措置を取ることができたが、本改正法では情報捜査機関の長の捜査や委員会の審議を行わずとも産業通商資源部が直ちに措置命令ができるように改正された(法第11条第8項)。併せて、未承認·未申告の海外買収·合併行為があった場合にも、産業通商資源部が直ちに措置命令ができるように改正されており(法第11条の2第10項)、これに対して措置命令が定めた期間内に命令が履行されない場合、履行強制金を課すことができる旨の規定が設けられた(法第11条の3)。本改正の目的は、より実効的に国家核心技術の流出危険性を減らそうとするものである。
また、これまでは国家から研究開発費の支援を受けて開発した国家核心技術を輸出する場合にのみ、その輸出の承認時に国家安保及び国民経済的波及効果を検討する旨を規定していたが、本改正法では海外企業による国家核心技術保有機関買収·合併承認時にも、国家安保に加えて産業技術流出による国民経済的波及効果を検討するように改正がなされた(法第11条の2第4項)。さらに、国から研究開発費の支援を受けずに開発した国家核心技術の輸出又は海外企業による国会核心技術保有機関買収·合併に関する申告を受理するにあたり、国家安保についての検討をするように規定し、国家核心技術の海外移転に対する規制を強化した(法第11条第5項、第11条の2第7項)。
3)産業技術侵害行為の範囲拡大及び処罰強化
本改正法では、産業技術(国家核心技術を含む)の流出及び侵害行為に該当する行為として、①産業技術に対するアクセス権限を有する者が、産業技術を指定された場所の他に無断流出又は目的外で使用·公開をし、②産業技術の流出行為を紹介·斡旋·誘引し、③国家核心技術輸出において申告、又は不正な方法で申告して輸出する行為を追加し、その範囲を拡大した(法第14条)。また、今後は産業技術の流出及び侵害行為を外国で行った場合でも、本法が適用される旨を規定した(法第14条の4)。
加えて故意的な産業技術侵害行為の場合、懲罰的損害賠償の限度を3倍から5倍に拡大するとともに(法第22条の2第2項)、国家核心技術の海外流出行為者に対する罰金刑の上限を15億ウォンから65億ウォンに、産業技術の海外流出行為者に対する罰金刑の上限を15億ウォンから30億ウォンに大幅に引き上げた(法第36条第1項、第2項)。
2. 第5次総合計画の主な内容
上記の法改正案が韓国国会にて可決された同日、産業通商資源部は第5次総合計画を発表した。この計画の内容は、韓国政府が国家核心技術の保護を高度化し、その管理と規制をより効果的なものにするための産業技術保護法改正の方向性と軌を一つにしたものである。
産業通商資源部は、①バッテリー分野、宇宙分野等、国家安保·国民経済との関連性が高い有望技術についての国家核心技術の追加指定、②産業技術保護専門委員会への「買収·合併(M&A)」分野の新設、③セキュリティが脆弱な大学·中小企業を対象としたセキュリティコンサルティング等の支援拡大、④ビッグデータ分析を通じた国家核心技術の核心人材の管理、④国家核心技術保有機関に対するクラウド保護措置基準の策定等、国家核心技術の保護のための管理強化、審査制度及び処罰強化といった全分野にわたる総合的な計画を発表した。
特に産業通商資源部では、①これまで国家核心技術保有に対する判定の実務的困難を解消するために、2025年下半期中に、指定すべき国家核心技術の細部技術範囲を確認できる「技術範囲ガイドライン」を定めて普及させようとしており、(2)外国人による買収・合併に対する専門的な審査を行うために、これまで技術分野別に運営されていた産業技術保護専門委員会に新たに「M&A専門委員会」を設置し、外国人の範囲及び支配権取得基準(現在50%以上取得)に関する施行令を改正して審査を強化する旨を発表した。
今回の産業技術保護法改正法は、かなり大幅な改正で、これまでの実務で提起されていた問題点と論議事項の相当数を反映して規制を強化したものと見られる。