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ニュースレター

韓国特許庁、優先審査申請の対象拡大とバイオ分野特許審査専担組織の新設の動き

2025.05.16

1. 特許・実用新案の優先審査申請の対象となる技術分野の拡大と申請要件の緩和

韓国特許庁は、2025年2月19日付で「特許・実用新案の優先審査の申請に関する告示」を改正し、先端技術関連の出願について下記の技術分野(バイオ、先端ロボット、人工知能)にも優先審査申請の対象を拡大するとともに、申請要件も一部緩和した。特に申請要件については、申請時に必要とされていた先行技術調査が削除されて申請人の負担が軽減されており、PPH以外の出願の場合でも優先審査申請の活用度が高まるものと期待される。

ただし外国出願人の場合は、下記1)の先端技術関連の優先審査申請において国内で生産/準備中という要件を満たすことが困難なことも多いと思われる。一方、下記2)、3)の技術関連の出願において優先審査申請の対象となる技術分野は、CPCで定められる1)の場合とは異なり、韓国特許庁が別途付与するコードが基準となるため、技術分野に該当するかの判断が容易ではなく審査官に説明して判断を受けなければならない点に留意する必要がある。

1) 先端技術関連の出願
・技術分野:半導体、ディスプレイ、二次電池に加え、バイオ、先端ロボット、人工知能が追加
 - 技術分野はCPCで定められる

・要件:国内で生産/準備中の企業、国家研究開発事業又は特性化大学の出願
 - 事業者登録証の提出が必須だったが、技術移転契約書等の提出でも可能となった
 - 従来要求されていた先行技術調査の結果の提出は要件から除外された

 

2) 第4次産業革命関連の出願
・技術分野:AI、IoT、3Dプリンティング、自動運転、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、知能型ロボット、スマートシティ、仮想・拡張現実、革新的新薬、新再生エネルギー、カスタマイズ型ヘルスケア、ドローン、次世代通信、知能型半導体、先端素材、ブロックチェーン、スマート製造、次世代バイオ医薬品

・要件:特許庁が付与する第4次産業革命関連の新特許分類(Zコード)を与えられた出願
 - Zコードが付与されていなくても技術分野により優先審査の申請が可能で、審査官が該当するか否かを職権で判断してZコードを付与する
 - 従来要求されていた先行技術調査の結果の提出は要件から除外された

3) グリーン技術関連の出願
・技術分野:二酸化炭素の捕集に加え、水素・アンモニア、次世代原子力、先端モビリティ(電気自動車、水素電気自動車など)、再生エネルギー生産技術(太陽光、風力、水力、海洋エネルギー、水熱、地熱など)が追加
・要件:特許庁が付与するグリーン技術の特許分類(Gコード)を与えられた出願
 - Gコードが付与されていなくても技術分野により優先審査の申請が可能で、審査官が該当するか否かを職権で判断してGコードを付与する
 - 従来要求されていた先行技術調査の結果の提出は要件から除外された

 

2. バイオ分野の特許審査組織の新設

韓国特許庁は、2025年3月10日、特許審査組織を改編し、バイオ分野の特許審査を専門的に扱う新たな組織を発足する旨を発表した。これにより同分野での「特許ファーストトラック」が本格稼働し、出願人は優先審査時に2ヶ月以内に、迅速に特許審査の結果を受け取ることできるようになることが期待されている。

これに先立つ2025年1月23日、韓国政府は、バイオ分野の産業を新たな成長動力源とすることを国家戦略として提示している。これを受けて韓国特許庁はバイオ分野を積極的に支援するため、今回、バイオ産業生態系全分野に対する専門的な審査が可能となるように以下のとおり既存の「バイオヘルスケア審査課」を改編し、新たに4課を設置して、計5課120人規模のバイオ分野専担審査組織を発足させることとした。

 

バイオ分野の審査組織改編と特許出願推移

これにより、バイオテクノロジー分野として「バイオ基盤審査課」「バイオ診断分析審査チーム」及び「バイオ医薬審査チーム」が、ヘルスケア分野として「ヘルスケア機器審査チーム」及び「ヘルスケアデータ審査チーム」が発足し、これらの組織によりバイオ産業生態系の全工程を一貫した特許審査が可能になったと評価されている。

 

特に最近5年間、韓国国内のバイオ(バイオテクノロジー及びヘルスケア)分野の特許出願は年平均8.2%で急増しており、これは特許全体の出願増加率(2.3%)の約3.5倍にあたる。このため韓国特許庁は、今年2月、民間のバイオ分野専門家35人を特許審査官として採用をするとともに、上述したとおりバイオ分野を優先審査の対象として追加指定をした中、これに続いて今回のバイオ分野専担審査組織の新設がなされることとなった。

バイオ分野専担審査組織には、新たに採用された35人の審査官と既存の各審査局に散在していたバイオ分野の審査官85人を集中配置した。これにより計120人に達するバイオ分野審査官の審査能力を結集し、今後、韓国特許庁は協議審査などにより審査品質を高めるとともに、現在18.9ヶ月かかっている審査処理期間も優先審査時に2ヶ月程度に短縮できることを見込んでいる。

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