韓国の特許審判院は、2025年1月から、特許及びデザイン登録に関する拒絶決定不服審判において登録決定が妥当で追加の争点がないと判断した場合には、審査官に差し戻すことなく審判官自らが審決により登録決定することとしている。これによる審判実務の変更点及び留意点は、次のとおりである。
従来は拒絶決定不服審判の審理の結果、出願人の審判請求に理由があると認められれば拒絶決定を取り消し、審査局に差し戻して審査官が再度審査してきた。これにより審査局で再度の審査を行うために、登録決定までの時間がさらにかかっていた。
このような登録遅延を改善するために、特許審判院は、拒絶決定不服審判の請求を認容する場合において、審査段階で検討されなかった争点が残っている場合や新たな拒絶理由が発見された場合など追加の審査が必要な場合のみ審査官に差し戻すこととし、追加の争点がない場合には審判官が審決により直接登録決定をすることができることとした。これにより審判官が審決で直接登録決定することで、出願人が特許出願やデザイン登録出願について従来より1~2ヶ月程度早期に登録できる効果が期待される。
審決において審判官が登録決定をしなければならない場合と、取消差戻しをしなければならない場合は、以下のとおりである。
特許審判院で登録決定をする場合の手続きについては、審査官が通常送付する様式の特許決定書は送付されず、審判の審決文が送付され(審決文には登録料納付に関する書類も添付される)、その審決文の主文として「原決定を取り消し、本件出願を特許決定する」旨が記載される。その際、分割出願が可能であるかについては、審査段階で特許決定がされた場合(特許決定書が送達された日から3ヶ月以内に分割出願が可能)と同じく、特許拒絶決定取消審決の謄本が送達された日から3ヶ月以内に分割出願が可能である。