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韓国大法院、自己公開を理由とした公知例外主張の効果は同一性が認められる後続の自己公知発明にも及び、自己公知発明が特許出願された発明と同一であることは要しないと判断

2025.08.14

韓国大法院は、自己公開を理由とした公知例外主張の効果について、(1)一番最初に公知となった発明に対してのみ公知例外主張をしたとしても、公知となった残りの発明が一番最初に公知となった発明と同一性が認定される範囲にあれば、公知となった残りの発明にまで公知例外の効果が及び、(2)公知例外規定が適用されるために必ずしも自己公知となった発明が特許出願された発明と同一でなければならないものではないと判断した(大法院2025.5.29.言渡し2023フ10712判決)。

 

事実関係

 

1)原告は、「体外診断検体フィルタ用ケース」に関する考案(以下「本件考案」)の実用新案権者である。本件考案の体外診断検体フィルタ用ケースは、検体フィルタ(201)を収容できる検体フィルタ収容溝(11b)が陥没形成されている支持部(10)、及び検体フィルタ収容溝(11b)を囲むように支持部(10)に結合される蓋部(20)を有しており、蓋部(20)は表面に希釈液チューブ(202)を起立状態で収容できる希釈液チューブ収容溝(21b)が陥没形成されているのを特徴とする。

2)原告は、2018年7月5日に本件考案に係る出願をし、試薬モデル1に含まれる「体外診断検体フィルタケース蓋部」の2017年11月10日の輸出、及び試薬モデル2に含まれる「体外診断検体フィルタケース」の国内販売に基づく公知例外適用を主張した。試薬モデル1は、試薬モデル2の検体フィルタ用ケースのうち「蓋部」のみを含むものである(以下、試薬モデル1の蓋部は「先行考案1」、試薬モデル2の検体フィルタ用ケースは「先行考案2」)。原告は試薬モデル2の国内販売後(かつ出願前に)、試薬モデル3も国内販売をしていたが、試薬モデル3の販売に基づく公知例外適用は主張しなかった。試薬モデル2と3は検知するウイルスがそれぞれ異なるだけで、検体フィルタ用ケースは同一である(以下、試薬モデル3の検体フィルタ用ケースは「先行考案3」)。これに対して、被告は先行考案1,2等に基づいて特許審判院に無効審判を請求したところ、特許審判院では本件考案が先行考案1によって新規性が否定されるという理由で被告の審判請求を認容する審決を下した。

 

 

 

3)審決取消訴訟では、a)先行考案2が本件考案の公知例外適用日前に公知となっていたと認められる客観的な証拠がなく、b)先行考案3は検知するウイルスが異なるだけで公知例外適用日を主張した試薬モデル2の「体外診断検体フィルタ用ケース」と構造及び形状が同じであるため考案の同一性が認定され、同一の検体フィルタケースに対する後行公知行為は最初の公知行為に基づいたと認められるということが妥当で、c)先行考案1は本件考案(体外診断検体フィルタ用ケース)の構成のうちの一部(蓋部)のみを有しているところ、公知例外規定における自己公開した考案は必ずしも実用新案出願された考案のすべての構成を有していることが要求されるものではないので、先行考案1,2,3はいずれも公知例外適用主張の効果が及ぶという判断に基づいて原告の請求を認容した。

 

大法院の判断

 

実用新案法第11条で準用される特許法第30条第1項第1号は、特許を受ける権利を有する者によりその発明が特許出願前に国内若しくは国外で公知となり、又は公然実施をされる等、特許法第29条第1項各号のいずれか一つに該当するように至った場合(以下「自己公知」)、その日から12月以内に特許出願をしたときは、その特許出願された発明について特許法第29条第1項又は第2項(新規性又は進歩性の要件)を適用するとき、その発明は、第29条第1項各号の公知となった発明に該当しないものとみなすとして公知例外規定を置いている。

これは特許法が、原則的に出願前に公知・公用となった発明又はその発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が公知・公用となった発明によって容易に発明することができる発明は特許を受けることができないとしていること(特許法第29条第1項、第2項)に対する例外を規定したものである。新規性又は進歩性の要件に関する原則を厳格に適用しすぎる場合、特許を受ける権利を有する者にとって過度に苛酷で公平性を失わせることとなったり、産業の発展を図る特許法の趣旨に合わなくなったりするケースが発生することがあるため、例外的に一定の要件と手続を備えた場合には、特許を受ける権利を有する者の発明が特許出願前に公開されていたとしても、その発明は公知等にならなかったものとして取り扱うように公知例外規定を置いたものである。

こうした公知例外規定の文言と趣旨に照らしてみると、特許を受ける権利を有する者が特許法第30条第1項で定めた12月の期間内に複数回の公開行為をし、そのうち最初に公知となった発明についてのみ手続に従って公知例外主張をしたとしても、公知となった残りの発明が最初に公知となった発明と同一性が認められる範囲にあるならば、公知となった残りの発明にまで公知例外の効果が及ぶと認めるべきである。

一方、特許法第30条第1項第1号の公知例外規定は、特許出願された発明に比べて新規性要件である特許法第29条第1項だけでなく、進歩性要件である特許法第29条第2項を適用するときにも自己公知となった発明が公知等にならなかったとみなすと定めている。また、その規定の文言上、公知例外の効果が及ぶ「自己公知となった発明」と出願の対象である「特許出願された発明」とを明らかに区別している。これは特許出願された発明が自己公知となった発明の公知後の追加の研究開発や改良等を通じて自己公知となった発明と構成や効果に差異が生じることがあることを考慮したものである。したがって、公知例外規定が適用されるために、必ずしも自己公知となった発明が特許出願された発明と同一でなければならないとか、又は自己公知となった発明そのものが特許出願されなければならないと解することはできない。

このような法理に照らしてみると、上述した先行考案1と先行考案3に公知例外規定の適用の効果が及ぶと判断した原審に誤りはない。

 

コメント

 

大法院は、自己公開を理由とした公知例外(新規性喪失例外)の主張について、1)複数の自己公開行為がある場合、最初の公知行為に対してのみ公知例外主張をしたとしても同一性が認められる範囲の後続の公知行為に対しても公知例外主張の効果が及ぶこと、2)公知例外規定上、自己公知となった発明が特許出願された発明と同一でないとしても公知例外主張の効果が及び得ることを判示している。

1) 複数の自己公開行為に関し「韓国特許庁の特許審査基準」では、複数回の公知行為それぞれに対して公知例外適用主張の手続きを行うことが原則であり、最初の公知行為と密接不可分の関係がある場合、後続の公知行為に対して証明書類の提出を省略することができると規定しており、したがって出願時に複数回の自己公開行為の全てについて公知例外適用の主張をすることを要求している。これに対し、本件での大法院と原審である特許法院は、公知となった発明と同一性が認められる範囲で公知例外主張の効果を認めており、これは公知例外主張の手続きに対して緩和された見解を示したものと理解されることから、本判決は今後の韓国特許出願の実務において影響を与える可能性も考えられる。

2) 実際の出願実務においては、自己公開した発明と同じ発明について公知例外の主張をして出願する場合が大部分であろう。一方で、自己公開行為の後、研究開発等を通して同一性の範囲を超える改良された発明について出願することもありうる。この場合、本大法院判決の内容を考慮すると、改良前の発明の自己公開行為によって改良された発明の新規性および進歩性が否定されるのを防止するためには、当該自己公開行為に基づく公知例外主張をして改良された発明について出願する方が望ましいといえる。

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