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代表取締役の職務発明を巡る法的争点及び示唆点

2026.02.13

企業の代表取締役は経営責任を負う「使用者」としての地位が強調されることが多いが、技術中心型企業の場合、エンジニア出身の代表取締役が直接技術開発を主導する事例もよくあり、この過程で代表取締役が完成させた発明の帰属と補償の問題が生じることがある。本件は代表取締役が発明振興法上の「従業員等」に該当することを明確にした上で、被告である法人が得た総技術使用料の収入に基づいて約38億ウォンという高額の職務発明補償金が認められた(特許法院2025.4.30.言渡し2024ナ10379)。

 

事実関係

原告は、被告1の法人の代表取締役として在職し、電力技術に関する特許7件を単独又は共同で発明した。被告1は原告からこれらの発明に係る権利を承継し、その後、事業構造の改編過程で当該権利を被告2の法人(被告1の特殊関係社)に譲渡した。被告2の法人は承継された特許に基づいて韓国政府から「新技術指定」を受けた。原告は退職後、被告らが原告の職務発明を通じて独占的利益を得たにもかかわらず正当な補償をしなかったことを理由として職務発明補償金請求訴訟を提起した。

 

主要争点

・ 代表取締役の主体性:法人の代表取締役及び実質的経営主と特殊関係にある役員が発明振興法第2条第2号の「従業員、法人の役員又は公務員」に含まれるかどうか。
・ 補償義務の帰属:発明当時の被告1の法人ではなく、特許権を譲り受けて実際に収益を得た被告2に対しても補償責任を問うことができるかどうか。

 

法院の判断

1) 代表取締役の役員の地位と補償請求権
特許法院は、発明振興法第2条第2号は職務発明の補償金請求権対象者を「従業員、法人の役員又は公務員」と規定しており、代表取締役は法人の役員の中で最も核心的な地位に該当するため補償対象から除外される理由がないと判断した。特に原告が経営権を行使する地位にあったとしても、発明者として投入した創意的努力に対する代価は経営成果に伴う配当や給与とは別の法的権利であることを明確にした。

2) 承継法人の補償義務(黙示的約定の認定)
原則的に職務発明補償義務は発明当時の使用者にあるが、特許法院は被告1と被告2の関係、特許権譲渡の経緯、及び被告2が当該特許を通じて実質的な独占収益を上げていたという点を総合的に考慮し、被告2の法人には特許権を承継して発明者に補償金を支払うものとする「黙示的約定」があったと認定し、被告1と共同で補償金を支払う義務があると判示した。

 

コメント及び示唆点

1) 企業の職務発明に対するリスクマネジメント
代表取締役や登記役員等経営陣も一般従業員と同じように職務発明規定が適用されるという点は企業において見落とされる可能性がある。本件の事例のように、経営陣として発明等を行った者は退職後に強い立場の「IP債権者」に変わる可能性もあるため、企業における役員任用契約の際には職務発明承継及び補償に関する書面合意をしておくことが望ましい。 

2) M&A等におけるIP Due Diligenceの重要性
特許権を譲り受ける企業は、当該特許の発明者に十分な補償金が支払われていなかった場合、特許権を譲り受けた後に、本件のように予期せぬ巨額の補償金債務を抱える可能性もある。こうしたリスクに備えて、M&A等における企業価値評価及び買収価格決定時にはIP Due Diligenceが重要となる。

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