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特許権共有者による「自己実施」を否定し、被告主導の生産・販売と判断した事例

2026.05.27

特許発明についての被告実施製品を被告の主導で生産・販売し、その製品を特許権の共有者から供給されていた場合に、その実施行為が特許権共有者の指揮・監督の下で行われたものではないとして共有者の自己実施行為には該当しないと判断し、被告による特許権侵害を認めた(特許法院 2025.5.28言渡し, 2023ナ11078)。

 

事実関係

原告は、携帯電話ケース、携帯電話スキンシールの開発・製造・卸売等を目的として設立された会社であり、発明の名称を「携帯電話スキン」とする特許発明に関する特許権を訴外Fと共有している。

被告は、携帯電話アクセサリの製造・流通業等を目的として設立された会社で、iPhoneやGalaxyモデルに使用できる「ライティングケース」製品(以下「被告実施製品」とする)を輸出し、又はオンラインショッピングモール等を通じて国内で販売している。

被告実施製品であるライティングケースは、特許請求項4及び請求項6の発明の構成要素をすべて含む「内蔵フィルムシート」を使用して製作されたものである。

当該フィルムは訴外株式会社Gでのみ生産され、ライティングケースは同フィルムを供給された訴外株式会社H(以下「H社」とする)でのみ組立・生産されたものである。Hが製造したライティングケースは、被告だけでなく、H社と、Fが代表取締役を務める株式会社I(以下「I社」とする)でも販売されており、また、Fは2019年1月5日に個人事業者であるJ(以下「J」とする)を設立し、直接販売している。

原告は被告らを相手取り、被告らが製造・販売する「ライティングケース」が特許発明を侵害しているとして、侵害差止め等を求める仮処分を申し立て、法院は「被告らはライティングケース製品を生産・譲渡してはならない」という内容の仮処分決定を下した。

その後、原告は被告に対し特許権侵害による損害賠償額として7億ウォン及びそれに対する遅延損害金の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起し、第一審法院は損害賠償額を約1億ウォンと認定した。続く特許法院において、被告は、Fが「J」という商号により個人事業者登録を完了した2019年1月頃以降、Fから被告実施製品を納入されたと主張し、Fは特許請求項4及び6の発明に関する特許権の共有者であり、原告の同意なしで自己実施が可能であるため、Fから被告実施製品を納入され販売した行為は原告の特許権を侵害しないと主張した。

 

特許法院の判断

共有者が特許発明を直接実施せずに他者に実施させる場合、その実施行為の全過程が共有者の計算に基づき、同者の指揮・監督の下で行われたものであれば、共有者による自己実施と認めることができるという前提のもと、従来I社名義で納品されていた被告実施製品を被告がI社に返品し、これを再びF(特許権共有者)名義で供給を受ける形態で、発注書や請求書、取引明細書等の各種書類に記載されていた名義人をI社からFに修正した事情、H社とFの間の2019年2月22日付の取引に関して、被告が従前にI社から納品された被告実施製品を返品し、再びF名義で供給を受けるように変更する過程で、H社もその部分に関する税務請求書を新たに発行した事情、被告は、FがH社及び被告を指揮・監督していたことを確認できる証拠として提出したメール(Fが2019年4月10日から2019年4月22日に送信したメール)は、いずれも仮処分決定が下された2019年4月1日以降に作成されたものであるという事情等を総合すると、被告とH社が主導的に被告実施製品を生産する基本的な取引関係は変更されていない状態で、Fは単に被告とH社に特許発明の実施許諾を与えた対価として、取引の中間段階で生じた取引差益を受け取る形で実施料を受領したと認められるため、2019年1月頃以降のライティングケースの生産・販売の全過程がFの計算の下で彼の指揮・監督の下で行われたと認めるには不十分であり、他にそれを認める証拠もないことから、被告の主張は受け入れがたいと判断した。

 

コメント

本件において特許法院は、特許権の共有者が特許発明を直接実施せずに他人に実施させた場合、その実施行為の全過程が共有者の計算の下でその指揮・監督下に行われたものであれば、共有者による自己実施と認められるという基準を示している。これについて、被告は共有者の指揮・監督下に行われた実施行為であることを示す証拠資料を提出したが、特許法院は、本件の実施製品は特許権の共有者ではなく被告が主導的に生産・販売した行為であると判断した。

この判断において特許法院は、実施製品について具体的な取引構造や、その各種取引書類が新たに発行されてその名義人が修正された事情、共有者が送信したメールの日付など、具体的な事実関係を総合的に考慮し、実質的に実施製品の生産・販売等の指揮・監督を行った者が誰であるかを把握して実施行為の主体を判断しており、こうした判断を具体的に示している点に本判決の意義がある。

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