韓国知識財産処は、2026年6月9日、生成型人工知能を活用した無分別な特許出願を防止して適切な特許出願を奨励するとともに、出願人が守るべき注意事項を提示するため、AI活用発明に関する出願ガイドラインとして『人工知能(AI)時代の適正な特許出願ガイドライン』を発行した。以下、その主な内容について紹介する。
1.AIの単純な活用を超えて人間が発明に貢献することが特許登録のために必要
韓国の特許法上、AI自体は特許を取得できず、発明をした者又はその継承者のみが特許を受けることができる。この場合に正当な発明者として認められるためには、発明の創作過程に実質的に貢献していなければならず、単にAIに一般的なプロンプトを入力してその結果物によりそのまま出願する場合は、特許法第33条(特許を受けることができる者)に基づく拒絶理由及び無効事由の対象となる。
審査官は、審査過程で正当な発明者であるかどうかが疑わしい場合には、特許法第33条の拒絶理由を通知し、研究開発ノート又は発明者確認書等、人が発明に貢献したことを証明する書類の提出を求めることができ、また、出願人(又は発明者)に面談を要請することができる。
2.AIが生成した結果を明細書等に記載する場合の法的責任
生成AIのハルシネーション現象が現実には存在しない技術内容や虚偽の効果を生じさせる可能性があるため、出願人及び代理人は、明細書や意見書等の特許文書の作成過程で、AIが作成した内容の真実性や発明の実現可能性を十分に検討しなければならない。また、AIが生成した仮想実施例等は「AI生成実施例」であることを明確にし、実際の実験結果との混同が生じないようにしなければならない。
AIを活用して医薬品や先端素材等の特許出願をする際は、一層の注意を要する。すなわちAIが提示した候補物質や効能を実験で確認せずに特許出願した場合は、実施可能性違反の拒絶理由及び無効事由に該当する。AIが生成した実験結果を検証することなく出願人や発明者が実験結果として記載して虚偽の特許を取得した場合、特許法第229条に基づく虚偽行為の罪等で処罰され得る。
3.AI発明の類型別の特許要件
AI発明は次の3つの類型に分類でき、次のように審査される。
1)AI自体に関する発明
コンピュータプログラム自体は、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しないため、特許を受けることはできない。このためAI発明について発明の成立性が認められるためには、当該発明は、AI(ソフトウェア)がハードウェア(プロセッサ、メモリ等)と結合して特定の目的を達成するための具体的な情報処理を実行するものである必要がある。
2)AI技術が構成要素として含まれる発明
AI技術が発明(請求項)の構成要素に含まれる場合、明細書の記載要件を満たすためには、技術的課題を解決するためのデータの前処理(pre‑processing)、学習データ、学習モデル、アルゴリズム等が、それらの技術的特徴に応じて明確に理解できるように明細書に十分に記載されている必要がある。また、進歩性が認められるためには、データの前処理(pre‑processing)や学習モデル、学習結果の活用過程において独創的な特徴があり、先行技術に比べて予測以上の効果を生み出す必要がある。
3)AIをツールとして活用して生まれた発明
AIを設計・探索ツールとして活用して最適な機械形状、設計図、新しい物質や用途等を見出した発明の場合、実際の実施可能性や反復再現性について必ず検証し、明細書を作成しなければならない。
たとえばAIを活用して新規化合物を導き出した場合には、単に化学構造式を記載するだけでは不十分で、その化合物が実際に製造可能であることを示す実験データ等の資料を添付する必要がある。特に、新規化合物の製造方法については、化学発明としての特性上、理論的予測だけをもって実際の実施可能性を確認することが困難であるため、具体的な製造手段と方法を必ず記載しなければならない。
医薬・バイオ技術分野では、客観的かつ信頼できる実験結果を通じて発明の効果を実証しなければならない。たとえばAI生成結果等の仮想環境コンピュータシミュレーション(in-silico)結果だけではその有効性や効果を証明するには不十分であるため、動物試験(in-vivo)や試験管内試験(in-vitro)等、実質的かつ具体的な実験データにより有効性や効果を立証しなければならない。
4.AIを使用する場合、発明の内容が外部に流出する可能性に注意すること
外部AIモデルに入力されたプロンプトやデータはAI学習データとして活用される可能性があり、その過程において企業の営業秘密や核心技術情報がAI企業のサーバーに保存されて第三者に提供される可能性がある。その結果、その発明の新規性判断に影響を与える可能性も否定できないため、注意が必要である。AIを使用する前に、入力データが外部AIモデルの学習に利用されないようにユーザー環境を設定する等、情報セキュリティに注意する必要がある。
コメント
最近の生成AIの急速な発展に伴い、今回、韓国知識財産処はAI活用発明に関するガイドラインを新たに公表することとなった。今回のガイドラインの主な内容は、AIの成果物をそのまま特許出願に使用した場合には審査官が拒絶理由を通知して、正当な発明者であることを証明する書類を出願人に要求することに加え、AI生成結果に関する虚偽の記載に対しては特許法上の刑事罰の対象になり得ることを明らかにしており、これらはAIを適正に使用して特許出願することへの知識財産処の認識を示したものと考えられる。
このようなAI活用発明の審査に関する考え方については日韓で大きな違いはないものと思われ、韓国においてAI活用発明について特許を受けるためには、人が発明の創作過程で実質的に貢献したことを示すことや、AIが生成した試験結果を出願人が適正に使用することへの法的責任が伴うことについて注意が必要となる。これに関連し、世界各国で生成AIを活用した特許出願が増加している中、各国特許庁もガイドラインを策定しており、韓国でも今回のガイドライン公表を含めて今後の動きに注視していく必要がある。




