Skip Navigation
Menu
ニュースレター

ライセンス契約およびロイヤリティ関連の韓国法上の注意事項

2020.08.10

多くの多国籍企業が韓国での事業展開のためにライセンス契約を締結したり、それに伴うロイヤリティを支払っているが、韓国の関税法および公正取引法上における注意点を最近の韓国の国内状況や大法院判決とともに紹介する。


関税法上の注意点:
ロイヤリティまたライセンス料による関税の過払いはないか。

韓国の関税法は、海外から韓国に物品を輸入する上で輸入物品と関連して海外にロイヤリティまたはライセンス料を支払った場合、一定の条件を満たせば、ロイヤリティまたはライセンス料を輸入物品の課税価格に含めて関税を算出する旨を規定している。例えば、輸入者が輸入物品の価格を100ドルで申告し、関税および付加価値税として18.8ドルを関税庁に納付しながら、さらに輸入物品の代金とは別途に当該輸入物品関連のロイヤリティ50ドルを輸出者らに支払った場合、税関は当該ロイヤリティを物品代金の一部とみなし、当該輸入物品の輸入価格を150ドルとして、関税および付加価値税を28.3ドルとして算出することができる。このような方式により韓国関税庁は多くの企業の関税算出の内容を調査し、追加関税を徴収してきた。


これに関連した、最近、当所が代理した大法院の勝訴事例の紹介。

 

・特許権およびノウハウに対するロイヤリティについての大法院の事例

大法院は、韓国国内の素材企業が製品生産のための設備を輸入した後に、当該設備を使用した事業関連の特許権・ノウハウの使用対価として支払ったロイヤリティ全額を当該輸入設備の課税価格に含めて関税を算出することは違法であるとする判決(2016ドゥ34110、2016ドゥ34127(併合))を下した。

この事案において関税当局は、ロイヤリティ全額が上記輸入設備に関連してその輸入取引の条件として支払われたため、関税法が課税対象として定めている「権利使用料」に該当するものと見て、ロイヤリティ全額を輸入設備の課税価格に含めて課税した。
これに対し、当所は上記素材企業が支払ったロイヤリティに、輸入設備との関連性がない工程管理ないし事業運営に関するノウハウの対価が含まれている旨を主張し、この主張を大法院は認め、ロイヤリティの全てが上記輸入設備の課税価格に含まれるのではないとする最終判断をした。

 

・著作権に対するライセンス料についての大法院の事例

大法院は、TVチャンネル事業者がアニメーションなどの映像を輸入するのと共に、一定の期間、韓国国内のTVチャンネル等により放映できる権利を与えられる対価として支払ったライセンス料は、関税法上、輸入物品の課税価格に含まれないとする判決(2018ドゥ57599)を下した。

この事案において上記輸入者は、映像が収録されたビデオテープを海外制作会社から輸入する一方、海外制作会社が製作した映像を国内でTV等を通じて放映できる権利を与えられ、その対価としてライセンス料を支払った。また、輸入者はビデオテープに対する関税を納付し、ライセンス料をビデオテープの輸入金額に加算せずに関税を計算した。
これに対し関税当局は、上記ライセンス料が輸入物品であるビデオテープに関連したものであって、関税法が課税対象に定めた「権利使用料」に該当すると見て、ライセンス料をビデオテープの輸入金額に加算して関税を計算すべきである旨を主張しながら、関税額等の差額と加算税などを課税した1審及び2審は課税が正当であると判断した。
しかし、大法院は、TVチャンネル事業者が支払ったライセンス料は輸入後に映像を韓国で放映する方法で再現する権利(再現生産権)の使用対価として支払われたものであるため、輸入物品の課税価格には含まれないと判断した。


公正取引法上の注意点:
ロイヤリティの賦課が特許権の正当な権利範囲を逸脱しないか。

一般にライセンス契約による実施料(ロイヤリティ)の賦課行為は、特許権による正当な権利行使として認められるが、次のように実施料を不当に要求する行為については、韓国の公正取引委員会により特許権の正当な権利範囲を逸脱したものと判断される可能性がある。

(1)不当に、他の事業者と共同で実施料を決定・維持または変更する行為
(2)不当に、取引相手等によって実施料を差別的に賦課する行為
(3)不当に、実施許諾された技術を使用していない部分まで含めて実施料を賦課する行為
(4)不当に、特許権消滅以後の期間まで含めて実施料を賦課する行為
(5)実施料の算定方式を契約書に明示せず、特許権者が実施料の算定方式を一方的に決定または変更できるようにする行為

さらに標準必須特許(SEP)の場合にFRAND条件に反して不当に標準必須特許の実施条件を差別する、または非合理的な水準の実施料を賦課する行為や、特許管理専門事業者の場合において通常の取引慣行に照らしてみると顕著に不合理な水準の実施料を賦課する行為も、特許権の正当な権利範囲を逸脱したものと判断される可能性がある。

実施料の賦課行為が特許権の正当な権利範囲を外れて、市場支配的事業者の地位濫用行為、複数事業者間の不当な共同行為、または不公正取引行為に該当すると判断される場合には、是正措置、課徴金賦課および/または刑事処罰を受けることがある。

これに関連して公正取引委員会は、2016年12月に知識産業監視課を新設し、2019年11月には情報通信技術(ICT)分野の不公正取引行為等の調査専担チーム(TF)を稼働させて、知識財産権濫用に対する綿密な監視をすることを明らかにした。特に上記TFのうち知識財産権担当チームは、標準必須特許権者等が競合社の参入を遅延させる行為や、特許使用料の不当賦課等を通じて取引相手に不利益を与える行為の監視をすることが主な役割とされる。

こうした近年の韓国の事業環境のもと、ライセンス契約をはじめとし、特許権の取得から行使に至る様々な段階で公正取引法違反の要素がないか、従来よりも留意する必要がある。

共有する

cLose

関連メンバー

CLose

関連メンバー

Close