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不正競争防止法上のアイディア侵害差止規定に基づく民事救済請求を認容した大法院判決

2020.11.12

韓国の大法院は、最近、不正競争防止法上の他人のアイディアを不正に使用・提供することを禁止する不正競争防止法第2条第1号(ヌ)目と、他人の成果物の無断使用を禁止する(ル)目の規定が問題となった事件で、権利者のアイディアと成果物に対する侵害を認め損害賠償および侵害差止などを命じた原審の判断を維持する判決を下した。(大法院2020.7.23.言渡し2020ダ220607判決)

 

本件で原告は、被告のためのマーケティング代行業務契約を結び、チキン製品の広告を制作する過程で広告コンテおよび製品のネーミングを制作して被告に提供したが、被告は業務契約が期間満了により終了するとすぐに、原告が提供した製品のネーミングおよび広告コンテに対する対価を支払わないまま、これを原告の競合企業に渡し、被告製品の広告制作に無断で使用させた。

このような被告の行為が不正競争防止法上のアイディア不正使用および成果物無断使用に該当するかが問題になったが、大法院は、原告が制作した広告コンテおよび製品のネーミングが原告の相当な労力および投資による成果などであり保護される価値があると認め、被告が原告の制作物を自らの広告に使用したことについて何らの対価も支払わなかったので、被告の行為が該当産業分野の商取引慣行に照らしてみるとき、業務契約に基づいてその制作物を正当に取得し使用したと認めることができないことを理由に、被告の本件広告コンテおよび製品ネーミング無断使用行為は原告のアイディアを不正に使用する行為[不正競争防止法(ヌ)目]であり、原告の成果物を無断使用した行為[不正競争防止法(ル)目]に該当するというソウル高等法院の判断が正当であると判示した。

今回の大法院判決は、不正競争防止法(ル)目に関する大法院の最近の一貫した立場を確認できるという点でも意味があるが、本件において、2018年7月18日付で施行された不正競争防止法(ヌ)目のアイディア侵害禁止規定に関する法理を大法院が初めて判示したという点でも意味があり、以下ではこれについて詳察する。

 

企業の経済活動において知識財産が日々重要度を増していく中、アイディアが企業の生存および利益に大きな影響を及ぼすようになるにつれ、これに関する保護の必要性を求める声が高まっていった。特に取引過程または取引のための協議過程でやむをえず露出せざるを得ないアイディアを保護する立法世論に足並みをそろえて不正競争防止法(ヌ)目が立法され、これは企業の技術的・営業上のアイディア保護のための先導的な法例として評価された。しかしアイディアを知識財産として保護する立法は、上記のような長所にもかかわらず、抽象的なアイディアを特定人が独占することを認めることにより企業活動の縮小を招き得るという問題があったことから、立法以降もその解釈と適用基準に関する議論が続いてきた。

 

これに関し大法院は、本件で次のとおり不正競争防止法(ヌ)目の保護基準を提示した。

 

・不正競争防止法が保護する経済的価値を有するアイディアに該当するか否かは、アイディア情報の保有者がその情報の使用を通して競争者に対し競争上の利益を得ることができ、またはその情報の取得や開発のために相当な費用または労力が必要な場合であるか等により具体的・個別的に判断しなければならない。

・アイディアを不正に使用したか否かは、取引交渉または取引過程の具体的な内容と性格、アイディア情報の提供がなされた動機と経緯、アイディア情報の提供により達成しようとする目的、アイディア情報の提供に対する正当な対価の支払いの有無などを総合的に考慮し、そのアイディア情報の使用などの行為がアイディア情報の提供者との取引交渉または取引過程で発生した信頼関係などに違反すると評価されなければならない。

併せて、大法院はアイディアの取得行為が不正競争防止法(ヌ)目の立法以前になされたとしても、それを無断使用する不正競争行為が立法以降も継続していたとすれば、当該規定を根拠にアイディア侵害行為を規制できるとしたところ、このような大法院判決により、アイディア情報の提供時点を理由に不合理に持続的な被害を甘受する状況が救済されるようになった。

 

今回の判決は不正競争防止法上のアイディア保護に関する具体的な基準を提示することにより、今後の法院判断の予測可能性を高めることができるようになったと同時に、本規定を通じて営業上の必要によりやむをえず提供される企業情報の保護の可能性が拡張されたという点でも意味がある。

これにより、今後多くの企業が取引過程で交換される情報およびアイディアの保護方案に関心を持つと予想されるところ、企業としては不合理に奪われたアイディアに対する権利救済方案を講じることができるようになった反面、取引交渉または取引過程で不必要に他人のアイディアを取得することにより不必要な紛争に関わることのないよう、企業実務を綿密に検討する必要があると思われる。

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