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自由実施デザインの抗弁の限界を明確にした大法院判決

2023.05.17

韓国大法院は最近2件の判決を通じ、確認対象デザインが登録デザインの権利範囲に属するかを判断する際、デザイン権者が新規性喪失例外規定の適用を受ける場合には当該規定の適用の根拠となった公知デザインに基づく自由実施デザインの抗弁は認められないという点を明確にした(大法院2023.2.23.言渡し2021フ10473判決、2022フ10012判決)。

 

自由実施デザインの抗弁は、長い間判例を通じて確立された法理で、デザイン権侵害訴訟においてしばしば援用される抗弁の中の一つである。具体的には、デザイン権侵害訴訟で被告は確認対象デザインが登録デザインの出願前に公知となったデザインと同一・類似で、またはそのデザインが属する分野において通常の知識を有する者が公知デザインまたはこれらの結合により容易に実施できるものであるときは、登録デザインと比較するまでもなくその登録デザインの権利範囲に属しないという自由実施デザイン抗弁が可能である。しかし、デザイン権者が新規性喪失例外規定の適用を受けた場合に、同例外適用の根拠となった公知デザインに基づいても自由実施デザインの抗弁が可能か否かが本件の主な争点となった。

下級審である特許法院段階で、被告は、自身が実施した確認対象デザインが登録デザインの出願日前に公知となった本件公知デザインから容易に創作できる自由実施デザインであるとしてデザイン権侵害責任を否認した。被告は自らの主張を裏付けるために登録デザインに対する無効審判も請求したところ、同無効審判に対しデザイン権者は、登録デザインが本件公知デザインの最初の公開日から12月以内に出願されたとして新規性喪失例外規定が適用されるべきであると主張した。一方、侵害訴訟でデザイン権者は、被告が自由実施デザインの抗弁の根拠とした公知デザインと関連し、本人が新規性喪失例外の適用を受けた以上、被告は当該デザインに基づいて自由実施デザインの抗弁をすることができないと主張した。

 

これに対し特許法院は、登録デザインに関して新規性喪失の例外主張が適法に適用されたとしても、被告が出願前に公知となった本件公知デザインがすでに公共の領域に置かれたデザインであると信頼した以上、被告の自由実施デザイン抗弁を制限することは公平を欠くと判示して原告の主張を排斥した。また特許法院は、新規性喪失の例外を認めることにより、本件被告とともに、その新規性喪失の例外主張の根拠となった公知デザインに基づいて登録デザインと同一または類似のデザインを実施した第三者が予期しない不利益を被ることから保護されなければならないと付け加えた。

 

しかし、大法院では、次のような理由で本件特許法院判決を破棄差戻しした。大法院は、新規性喪失の例外主張を認めるにあたり、デザイン保護法が一定の時期的・手続的要件(公開後12月以内に出願し決められた段階で関連証拠資料を提出しなければならない)を設けている点に着目し、出願前に公共の領域にあったデザインでも、新規性喪失例外規定の適用を受けて登録されたデザインと同一・類似のデザインであれば、登録デザインの登録無効が確定しない限り、登録デザインの独占排他権の範囲に含まれることを明示した。さらに大法院は、新規性喪失の例外主張の存在を知らずに公知デザインを実施した善意の先使用者に対し、デザイン保護法が先使用による通常実施権を認めているので、第三者との利益均衡は成立したと認めることができると指摘した。

上記大法院判例は、登録デザインが新規性喪失例外規定の適用を受ける場合に同適用の根拠となった公知デザインに対しては自由実施デザインの抗弁が制限され得るという点を明確に整理した判決として意味が深い。

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