Skip Navigation
Menu
ニュースレター

関連訂正審判の結果が出るまで差戻無効審判の審理を中止しなかったことは違法ではないとした特許法院判決

2023.11.14

審決取消訴訟の確定判決により特許有効の審決が取り消されて特許審判院が再び審理することになった差戻無効審判の手続きにおいて、関連訂正審判の結果が出る時までその審理を中止せず、当該確定判決の趣旨に従って無効審決を下したことが違法であるかについて争われた(特許法院2023.3.17.言渡し2022ホ2752判決)。

 

事実関係

 

本件は、被告が2019年6月3日、原告を相手取り本件特許発明の進歩性が否定されるという理由で特許審判院に無効審判を請求したことに始まり、その後、特許無効事件と関連訂正事件が併行することとなったもので、両審判事件の進行経過を時系列に整理すると下表のとおりである。

 

 

判決内容

 

1. 関連法理
法院は審決取消の訴えが提起された場合において、その請求に理由があると認めるときは判決をもって該当審決を取り消さなければならず、審判官は審決の取消判決が確定したときは再び審理をして審決をしなければならず、上記の取消確定判決において取消の基本になった理由は、その事件について特許審判院を羈束する(特許法第189条)。
一方、審決を取り消す判決が確定した場合、羈束力は、取消の理由になった審決の事実上及び法律上の判断が正当でないという点において発生するものであるから、取消後の審理過程で新しい証拠が提出されて羈束的判断の基礎になる証拠関係に変動が生じるなどの格別の事情がない限り、特許審判院は、上記で確定した取消判決において違法だと判断された理由と同一の理由により従来の審決と同一の結論の審決をすることはできず、ここで新しい証拠とは、少なくとも取り消された審決が行われた審判手続き、ないしは、その審決の取消訴訟で採択、調査されていないものであり、審決取消判決の結論を覆すのに十分な証明力を有する証拠というべきである (大法院2002.12.26.言渡し2001フ96判決、大法院2008.6.12.言渡し2006フ3007判決など参照)。

 

2. 判断
1)本件審決に手続き的違法があるかに関しては、特許審判院が無効審判を審理する際に該当特許発明に関して訂正審判が請求されている場合に、訂正審判の結果が出る時まで必ず当該手続きを中止しなければならないとする何らの規定がないだけでなく、本件の具体的経過を見ても、本件特許発明に関する進歩性を否定する趣旨の取消確定判決が下されてから、原告が本件審決手続きにおいて新しい先行発明を提出するなどして発明の進歩性に関して新しい主張を展開したことがなく、さらに原告の訂正審判はその要件を備えていないと判断されて結局棄却されたところ 、このような点を総合してみると、特許審判院が本件審決を審理する過程で訂正審判請求を理由とした原告の審判手続き中止要請があったにもかかわらず手続きを中止せずに、取消確定判決の趣旨に沿って審決をしたことは、手続き的に違法であると見ることはできない。

 

2)また、原告が本件審決手続きで提出したという証拠は上の訂正審判が提起されて審理中であったという趣旨の書面に過ぎないので、先行判決の羈束的判断の基礎になる証拠関係に変動をもたらす「新しい証拠」と見ることができないため、本件審決に原告主張と同じ何らかの違法があるということはできない。

 

3)原告は、このような特許審判院の本件審決手続きが民事訴訟法第1条第1項の公正な手続き保障の趣旨に反するとも主張しているが、上記の規定は訴訟手続きの「公正」だけではなく「迅速」も強調しているため、本件訂正発明を無効にする本件取消し確定判決後、原告が本件審決手続きで特別な新しい証拠を提出したこともなく迅速に手続きを進めたのが民事訴訟法第1条に反するものと見ることもできない。

 

4)一方、先行審決を取り消した特許法院の判決に対する上告が大法院で棄却されたことにより上記の取消判決はそのまま確定し、これに伴い、差戻し後の審判手続きでは新しい主張や証拠が提出されたことがなく、特許審判院は取消確定判決で取消の基本になった理由に符合するように本件審決をしたところ、本件審決にいかなる実体的違法もない。

 

コメント

 

特許無効審判に関連した訂正審判の請求時期について、日本の特許法第126条第2項では特許無効審判が特許庁に係属した時からその審決が確定するまでの間は、訂正審判を請求することができない旨を規定している一方で、韓国の特許法第136条第2項では特許無効審判が特許審判院に係属中である間は訂正審判を請求することができない旨が規定されている。すなわち、日本と韓国は無効審判の手続きの中では訂正請求のみ可能とされている点は共通するが、韓国では無効審判の審決が下された後は訂正審判請求が可能である。

本件はこうした訂正の時期が問題となったケースであるが、本件を原告(特許権者)の立場から見ると、無効審判の手続きで特許有効審決を受けたのちは、特別な事情等がない限り審決取消訴訟の手続きにおける訂正審判の請求について検討しないのが一般的であるといえる。しかし本件では、当該審決取消訴訟において特許が無効であるという理由で上記審決の結果を覆す判決が出されたため、これに対して原告は訂正審判を韓国特許法上の適法な時期に慌てて請求したものと思われる。しかし、結果的には、当該訂正審判に対する最終判断を受けることができないまま、訂正前の請求範囲に対して特許無効が確定してしまったため、原告は一連の手続きに対して不満を抱いたであろう。

こうした訂正審判と特許無効審判が並行する場合の手続きについて、韓国特許法第164条第1項では「審判長は、審判において必要であれば職権又は当事者の申請によりその審判事件に関連する特許取消申請に対する決定又は他の審判の審決が確定するか、又は訴訟手続きが完結する時まで、その手続きを中止することができる。」とのみ規定されている。この法文によれば、本件でも特許法院が実際に判示したとおり、差戻し後の無効審判の手続きは、本件特許に対する訂正審判結果が出る時まで「必ずしも」中止する必要はないものと理解できる。加えて本件の場合は、訂正審判において訂正後の請求範囲に係る独立特許要件の判断で進歩性なしという理由による棄却審決を受けた状況となったため、特許法院は最終的な訂正審判の確定を待たずに、本件の特許無効判決を下したという事情も窺える。

本件は特許権者として厳しい判断となったところ、特許権者の立場から有効審決後の審決取消訴訟の手続きにおいて、訂正審判の請求を考慮した訴訟戦略の重要性を教えてくれる。すなわち審決取消訴訟においては、審決の全体趣旨や相手方が追加で提出する無効立証資料(韓国の審決取消訴訟では新たな証拠資料を特別な制限なしに提出可)を綿密に検討した上で、訂正の必要性があると判断される場合には当該訴訟の結果を待たずして早期に訂正審判の請求を検討することが大切である。
 

共有する

cLose

関連メンバー

CLose

関連メンバー

Close