原告(ジェネリックら社)は、最初の許可適応症に基づいて存続期間が延長された特許権の効力は最初に許可された薬事法上の適応症に限定されるべきであると主張し、最初の許可適応症を削除して後続の許可適応症のみで許可を受けて延長された特許権を回避しようとする戦略を試みたが、特許法院は被告(特許権者、オリジナル社)の主張に基づき原告の主張を斥けた(特許法院事件番号:2024ホ13541,2024ホ13695等)。
本件は、特許権者であるオリジナル社側を当所で代理した事件として、昨年11月の弊所ニュースレターで紹介した審決「特許審判院、最初の許可適応症を超えて後続の許可適応症も、存続期間が延長された特許権の効力が及ぶ用途範囲に含まれると判断」に対する後続判決である。韓国における新薬の保護に影響を与えるものと考えられ、以下、本件判決の内容を紹介する。
事実関係
本件特許権者は、K-CAB錠(Tegoprazan)の物質特許に係る特許権を有し、最初の許可適応症に基づく特許権存続期間の延長登録を受けている。
約70のジェネリック社は、K-CAB錠の最初の許可適応症を除いた3つの後続の許可適応症をそれぞれ確認対象発明として計213件という多大な数の権利範囲確認審判を提起した上で、K-CAB錠の最初の許可適応症と後続の許可適応症は互いに異なるため、最初の許可適応症に基づいて存続期間が延長されたK-CAB錠の特許権の効力は確認対象発明に及ばないと主張した。
K-CAB錠の各適応症の品目許可は、下記の順で取得した。
特許審判院は、後続の許可適応症に係る確認対象発明は存続期間が延長されたK-CAB錠物質特許権の権利範囲に属する旨の審決を下し、特許権者であるオリジナル社は213件の審判全てに勝利した。37のジェネリック社はこの審決を不服とし、審決取消訴訟を提起した。
法院の判断
K-CAB錠事件に対する特許法院の判断内容は、次のとおりである。
▪特許法と薬事法の目的、特許存続期間延長制度と医薬品品目許可制度の各趣旨及び具体的運用方式等を総合してみると、延長された特許権の効力範囲を判断するための基準としての「用途」は、「最初の品目許可を受けた適応症」だけでなく、これと実質的に同一の疾患の予防と治療に使用される医薬品の適応症まで全て含むと解するのが妥当である。
▪「用途」の同一については、明細書の記載等を通して把握した特許発明の技術的意義や技術思想の核心、薬理メカニズムの同一性、適用対象器官(organ)や組織(tissue)等、具体的適用部位、対象病症、処方等の使用現況等を総合的に考慮し、具体的かつ個別的に判断すべきである。
▪本件の最初の許可適応症と後続の許可適応症は、①本件物質発明の技術的意義及び明細書記載事項、②教科書、ガイドライン、学術文献等の通常の技術者の常識、③最初の医薬品品目許可報告書等を考慮すると、いずれも本件特許発明で公開した「プロトンポンプを抑制するメカニズムのカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(potassium competitive acid blocker)を通じた胃酸分泌抑制」という治療効果に基づいて治療できる「酸関連疾患」に属するものであって、用途が同一である。
コメント
韓国では延長された特許権の効力範囲に関して、最初の許可に基づいて1回のみ延長可能とされている。韓国のベシケア大法院判決(大法院2019.1.17言渡し2017ダ245798)において、韓国特許法第95条の「対象物」が許可医薬品の主成分(ソリフェナシンコハク酸塩)でなく有効成分(ソリフェナシン)と解釈されるべきであると判示して以降、ジェネリック社は医薬品の主成分を既許可医薬品とは異なる塩、溶媒化物等に変更する方法により延長された特許権を回避することは難しい状況にあった。このためジェネリック社は、特許法第95条(存続期間が延長された特許権の効力範囲)の「特定の用途」の意味が最初に許可された薬事法上の適応症に限定されるべきであると主張し、存続期間延長登録の基礎になった最初の許可適応症を削除して後続許可がなされた適応症のみにより許可を受けて延長された特許権を回避しようとする戦略を試みている(いわゆる虫食い)。
これに対し今回の特許法院の判決は、特許法第95条の「特定の用途」を最初の許可適応症として限定解釈すべきではない点を判示した最初の特許法院判決である。本判決の意味は、新薬開発及び追加適応症確保のために数多くの努力をしてきたオリジナル社の正当な利益は当然保護されるべき一方、それにただ乗りしようとするジェネリック社の戦略は許容されるべきではないということを明確にしたものといえる。本判決に対して一部のジェネリック社が大法院に上告し、そのうち4番適応症に関する2件は審理不続行棄却で確定し、3番及び5番適応症に関する件は大法院に係属中である。




