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特許設定登録後に特許発明と先願発明の発明者全員を訂正手続きで一致させることにより先願発明は拡大された先願の地位を有しないとされた事例

2023.02.16

無効審判の被請求人が先願発明の発明者を訂正により追加した事案において、先願発明の特許証には追加された発明者が明確に表示されており、特許証発行に特別な瑕疵があると認めるだけの事情がないだけでなく、無効事由を回避するための目的で発明者追加制度を悪用したとか追加された発明者が真の発明者でないと認めるだけの事情がないため、本件特許発明と発明者全員が一致する先願発明は拡大された先願の地位を有するとは認められないと判示した(特許法院2022.10.28. 言渡し2021ホ4027判決)

 

事実関係

 

原告は、本件特許に対して無効審判を請求し、拡大先願規定背反を無効事由のうちの1つとして主張した。これに対し被告は、発明者追加制度により当該先願発明の登録原簿に「ソン・インヨン」を発明者として追加した上で、本件特許発明と発明者が全員一致する先願発明は拡大された先願の地位が認められないと主張した。

原告は、被告が無効審判が請求された後に先願発明の発明者を追加したことは拡大先願規定違反の無効理由を回避するための目的により発明者追加制度を悪用したものであって、追加された「ソン・インヨン」は真の発明者だと認め難いため、先願発明は拡大された先願の地位が認められるべきであると主張した。

 

特許法院の判断

 

本件特許発明の登録特許公報と先願発明の特許証によると、本件特許発明と先願発明は発明者全員が一致するということが分かるため、先願発明は拡大された先願の地位を有するとは認められない。

先願発明の特許証には追加された発明者が明確に表示されており、特許証の発行に特別な瑕疵があると認められるほどの事情を発見できないだけでなく、原告が提出した証拠だけでは被告が発明者追加制度を悪用したとか「ソン・インヨン」は真の発明者ではないとは認め難く、これを認める証拠もないことから、原告の主張は理由がない。

したがって、先願発明は拡大された先願の地位を有していないため、本件特許発明は先願発明から拡大された先願の規定に違反しない。

 

コメント

 

韓国特許法の拡大された先願の規定は、日本特許法の拡大先願の規定(特許法第29条の2)とほぼ同一である。両国の特許法は、いずれも発明者が複数である場合には、先願の発明者と後願の発明者が全員一致することを当該規定適用の例外条件とする。

ただし、特許権の設定登録前にのみ発明者の訂正が可能な日本とは異なり、韓国では、2019年6月10日に改正された特許法施行規則によって、特許権の設定登録後であっても、発明者のうち一部の発明者の記載が抜け落ちている場合や誤って記載していた場合には、発明者の追加または訂正をすることができるようにしている。この場合には、当該申請書の提出と共に、特許権者および申請前・後において発明者全員が署名または捺印して真の発明者である趣旨を示した確認書類を添付しなければならない(特許法施行規則第28条第2項)。

 

これに関連して、本件は第一審である特許審判院において、無効審判の請求人が特許・実用新案審査基準を引用して、発明者を変更する補正書が提出された場合には発明者の変更を通じて拒絶理由を解消しようとするなどの悪用に該当するか否かを判断すべきであると主張した。これに対して特許審判院は、特許・実用新案審査基準は「審査過程」において拒絶理由通知(拡大先願規定に関するもの)を意図的に回避するための発明者変更を防止するためのものであって、すでに登録された権利である本件特許発明に適用することはできず、こうした審査基準が本件審判手続きにおいて実体的に考慮されるべきだと認める根拠もないとした上で、先願発明の特許権者全員および発明者全員が追加された発明者が真の発明者であるとして署名または捺印した趣旨の確認書類が存在する以上、本件特許発明の無効理由のうちの1つである拡大先願規定違反の主張を回避するために発明者を追加したとは断定することができないと判断した。すなわち特許審判院の段階では、「審査過程」での拒絶理由通知を解消するための発明者訂正を禁止する審査基準を登録された特許に対しては適用しなかったことから、「無効審判の過程」において明確な証拠がない以上は特別な瑕疵なく正当な手続きにより成立した発明者の訂正が制度を悪用したものと判断されるのは容易ではないものと考えられる。

 

上記のような原告の主張は特許法院でも退けられた。したがって韓国において無効理由として同一出願人の先願発明による拡大先願規定違反が主張された場合には、特許証の訂正手続きを通じて発明者を訂正または追加することにより両発明の発明者を一致させることができるかについても検討すべきであるといえる。

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